近年タイに生産拠点を移したため、休止中の工場がある製造業の企業。
経理担当者の変更に伴い社長からセカンドオピニオンを求められた。
税関連の申告書をチェックしていた際、休止中の工場も事業所税の申告面積に含まれているのを発見し、修正申告したことで過去5年分の過大納付額の還付200万円を受けることができた・・・というお話。
状況
クライアント:タイに生産拠点を移しつつある製造業の代表 N社長
経理担当者の退職により、いままでの税務や経理の仕組みのムリ・ムダを省きたいといて特に節税関連のセカンドオピニオンを求められた。
税関連の申告書をチェックしていると事業所税の申告に間違いを発見した。
長村
社長、御社の税関連の申告書をチェックさせていただいていたのですが、ひとつ節税できるかもしれない点が見つかりました。
N社長
おおー。さすがですね!何税でですか?
長村
事業所税です。この工場、現在は営業を休止されてますよね?
でも事業所税の申告に含まれているみたいなんです。
N社長
ほんまですか・・・役所のミスなんかな?
長村
事業所税の申告は自己申告なので、こちらの担当者さんのミスかもしれませんね。
ただ、事業所税みたいなマニアックな税金の仕組みについてはご存知ないのが普通かもしれません。
だから、申告書も前年と同じように記入して提出・・・となると思います。
だから、多くの会社でこのような申告誤りが発生しているんです。
N社長
そうなんですか・・・事業所税ってどんな税金なんですか?
長村
政令指定都市等の同一市町村に所在する事業所の床面積が1000㎡を超えている場合にかかる税金ですね。
今回の場合、休止中の工場の面積を除くと年間40万円程多く納税しているみたいですね・・・。
このような場合、市役所の資産税課に事業所税の床面積に休止中の工場部分の床面積が含まれていた旨を伝えれば過去5年分還付してくれますよ。
課税売上割合に準ずる割合
事業所税には資産割と従業者割があり、それぞれについて市内のすべての事業所等を合算しておおむね次のような内容で課税されます。
資産割 | 従業者割 | |
---|---|---|
課税客体 | 事業所等において法人又は個人の行う事業 | |
納税義務者 | 事業所等において事業を行う法人又は個人 | |
課税標準 | 事業所等の用に供する事業所用家屋の床面積(事業所床面積) | 課税標準の算定期間中に支払われた従業者給与総額 |
課税標準の算定期間 |
法人:事業年度 個人:課税期間(1月1日から12月31日) |
|
税率 | 1㎡につき年額600円 | 従業者給与総額の100分の0.25 |
免税点 | 事業所床面積が1,000㎡以下 | 従業者数が100人以下 |
課税標準の算定期間の末日の現況による。 | ||
徴収方法 | 申告納付 | |
申告納付期限 |
法人:事業年度終了の日から2ヶ月以内 個人:翌年の3月15日 |
注意点
稼働休止施設部分の床面積は免税点の判定には含めますが、課税標準からは除かれるので課税は行われません。
N社長
くやしいなあ・・・今後の対策としてはどうしたらいいですか?
長村
事業所税でいうところの「休止施設」の定義は・・・
稼働休止施設の定義
稼働休止施設の事業所床面積は免税点の判定には含まれますが、課税標準からは除いて計算されます。
要件 | 内容 | |
---|---|---|
1 | 休止期間要件 | 課税標準の算定期間の末日以前6ヶ月以上事業を休止していること |
2 | 稼働休止要件 | 機械や設備などを撤去又は廃棄し、管理は引き続きなされているなどの客観的に事業を行っていないことが明らかなこと |
3 | 床面積要件 | 休止施設の床面積が明確に区分されていること |
4 | 遊休施設非該当要件 | 業務の用に供するための維持補修が行われ、いつでも操業できる状態にある施設でないこと |
と「事業所税の計算の手引き(各市役所が作成している冊子)」には記載されています。
具体的には、工場の建物を封鎖し、電気、ガス、水道を止めて使用していない状況にあれば休止施設として認められる可能性が高いと思われます。
他にも実際は使用していない工場や事務所を、ずっと資産割の床面積に含めて申告しているケースが多いので、一度確認してみるべきだと思います。
N社長
ありがとうございます!
他の施設のチェックと市役所への還付請求のお手伝いをお願いできますか?
その後
市役所の資産税課による現地確認を経て「休止施設」の確認を受けることができ、5年分の過大納付額の還付を受けることができました。
また今期および将来の事業所税が少なくなりますのでかなりの節税が行えました。
今回のポイント